第6章 真珠を量る女(ロー)
「ドフラミンゴにおれの居場所を教えたか・・・?」
「・・・私が若様にッ・・・あ、貴方の居場所を教えていたとしたら・・・それを握りつぶすの?」
クレイオがドフラミンゴを“若様”と呼んだ瞬間、心臓を持つローの手には力が入っていた。
おそらく無意識だったのだろう、苦痛に顔を歪ませているクレイオを見て、慌ててその手を緩める。
「教えたかどうかだけ、答えろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
クレイオは胸を抑えながらローを見上げた。
初めて彼に抱かれた日の夜。
ドフラミンゴから電伝虫がかかってきた。
“シャボンディ諸島に集まったルーキーの中に、ローはいたか?”
“トラファルガー・ローですか?”
“フッフッフッ・・・奴もそろそろ新世界に向けてそっちに寄る頃だ”
「・・・若様には、貴方のことを話していない」
「心臓を返して欲しいから、口から出まかせを言っているんじゃねェだろうな」
「・・・・・・・・・・・・」
“彼なら、目撃情報はまだありません”
「貴方がその表情をしているように・・・私も若様の恐ろしさは分かっている」
“海軍に召集されたついでに、ローがシャボンディ諸島にいるなら寄っていこうと思ったが・・・いねェならいい”
“若様・・・何故そこまでトラファルガー・ローに───”
“おれの右腕にするために育てた、可愛い部下だ・・・久しぶりに顔を見たいと思ってな”
「事情は知らないけれど、若様が貴方との連絡手段を持っていないということは、貴方が彼から意図的に逃げているということ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから、ローがここにいることは、若様には伝えていない・・・」
もし嘘をついていることをドフラミンゴに知られたら殺されるかもしれない。
しかし、伝えていたら、ローに殺されていただろう。
「・・・信じられねェな・・・」
ドフラミンゴの部下となった人間は皆、あの男に忠誠を誓う。
それだけのカリスマ性があることを知っているローは、クレイオの言葉を鵜呑みに出来ず、苦しそうに呟いた。
───次の瞬間。
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・
テーブルの上の電伝虫が目を覚ました。