第6章 真珠を量る女(ロー)
「・・・ドフラミンゴの店ならば、仕方がない」
海兵は銃を下ろすと、苦々しそうにクレイオを睨む。
「だがもし、我々の探しているキッドかローのいずれかを匿っていたことが後で判明した場合、貴様もただでは済まないことを覚えておけ」
「キッドもローも会ったことすらありませんが・・・肝に銘じておきます」
余裕の笑みを崩さないクレイオが相当気に入らなかったのか、一人の海兵がドアを強く蹴っ飛ばした。
しかし、海軍大将ならまだしも、ただの海兵にはどうすることもできない。
しかもポートガス・D・エースの公開処刑に向け、七武海は海軍にとって最重要戦力となる。
ドフラミンゴの機嫌を損ねることだけは絶対に避けなければいけないと、彼らも重々分かっていた。
「中には入らんが、この店は監視下にあることを忘れるな」
「ご理解、ありがとうございます」
去っていく海兵を見送り、胸を撫で下ろしながらドアを閉めたその時。
チャキ・・・
冷たく光る妖刀「鬼哭」の切っ先が、振り返ったクレイオの喉に突き付けられた。
「・・・ロー・・・?」
他の海賊達も助かったというのに微動だにせず、クレイオに刀を向けるローを見ている。
「クレイオ・・・お前はいったい、何者だ・・・?」
「何をするつもり・・・?」
クレイオの喉が震え、半開きの唇からかすれた声が漏れた。
あれだけ一緒の時間を過ごし、身体まで重ねていたというのに・・・
目の前にいる男は死神のように暗い殺気をまとい、冷酷な瞳をクレイオに向けている。
「ドンキホーテ・ドフラミンゴとは、どういう関係だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「───返答次第では、お前を殺す」
息をするだけで食い込む剣先。
あと数ミリ、強く押し込めたら皮膚を突き破り、急所を貫くだろう。
隠そうともしない殺意を前に、クレイオは静かに目を閉じ、口を開いた。