第6章 真珠を量る女(ロー)
しかし、その空気も突然のノック音で、緊迫したものに変わる。
ドンドンドンドン!!!
「海軍だ、ドアを開けろ!!」
べポは飲みかけていた水を吹き出し、ローはシャチの肩に包帯を巻きながら目を店の入り口に向けた。
ドンドンドンドン!!!
「海賊を匿っていないか、確かめさせてもらう!! 開けろ!!!」
おそらく、天竜人に危害を加えたトラファルガー・ローがまだ見つかっていないから、海軍は躍起になっているのだろう。
大柄なジャンバールは刺青の作業場に隠れてもらっているが、中に入ってこられたらロー達は間違いなく見つかってしまう。
シャチとべポが臨戦態勢を取った。
「みんな・・・大丈夫、私に任せて」
こんな狭い店の中ではロー達の方が不利だ。
負傷者だっているし、何よりローが体力の限界だろう。
クレイオは深呼吸を一つすると、べポを押しどけてドアの前に立った。
「彼らを中にさえ入れなければ、貴方達は見つからない。追い返してみせる」
「・・・無理をするな。おれ達の肩を持てば、お前もタダじゃすまねェぞ」
「心配しないで。そもそも、天竜人に逆らったのは私の方がずっと先・・・」
13年前、自分は父と一緒に奴隷達の背中に刻まれた天竜人の紋章を片っ端から消していった。
その罪は重い。
「お前、何をするつもりだ?」
「別に何も・・・私は“守られて”いるから大丈夫」
天竜人の紋章を傷つけた罪を問われない“特権”。
それを使えば、ロー達も守ることができるかもしれない。
ドンドンドンドン!!!
「あと10秒で開けないなら、ドアを破るぞ!!」
クレイオはケースにしまっていた天秤を取り出すと、けたたましくノックされているドアのノブをひねった。