第6章 真珠を量る女(ロー)
銃声。
爆音。
悲鳴。
あらゆる音が、クレイオの恐怖を煽った。
「ハァッ・・・ハァッ・・・!!」
早くローを見つけだしたいのに、恐怖のせいでうまく走れない。
息も絶え絶えになりながら3番GRまでくると、遠くの方から聞いたことのある声がした。
「シャチ、しっかりしろ!!!」
あれは・・・確か、ローの仲間のペンギンの声・・・!
土煙のせいで良く見えないが、特徴的なツナギの服からしてハートの海賊団であることは間違いない。
「ロー!! そこにいるの、ロー?!」
強い熱風に煽られながら叫ぶと、ペンギンとべポが煙の中から現れた。
「彫り師の女・・・?! なぜ、ここにいるんだ、危ねェぞ!!」
見れば、べポは気を失っているシャチを背負っていた。
どこを負傷したのか分からないが、右腕が血に染まっている。
すると二人から少し遅れて、海兵を足止めしていたローと大男がやってきた。
「お前ら、何してる! 早く逃げろ!!」
「キャプテン!!」
「クレイオ・・・? てめェ、ここで何してる!!」
珍しくローは余裕のない表情をしていた。
体力を消耗しているのか、肩で息をしている。
「ローが心配で来たに決まってるでしょ!」
「だったら、さっさと逃げろ。死にてェのか!!」
「でも───」
その時だった。
ピュン!!!
「くっ・・・!!」
言い終わらないうちに煙の向こうから飛んできた一本の光線を、すんでの所でローが長刀ではじき返す。
気が付いた時には、クレイオ達のすぐそばで爆発が起こっていた。
もしローが弾いていなかったら直撃していた、死の光矢。
突き刺さった地面からはどす黒い煙が立ち昇っている。
「おい、クレイオ・・・さっさと走れ」
「ロー・・・?」
「じゃねェとおれは、余計な体力をお前のために使うハメになる」
ローは顔を歪めながら、刀を持っていない左手で青白い光の輪を出していた。