第6章 真珠を量る女(ロー)
そして、残酷な人身売買の幕は切って落とされる。
───それではみなさん、長らくお待たせ致しました!!
「今月もオークションは盛況のようです」
クレイオの言葉に、相手は満足そうに笑った。
───まもなく、毎月恒例、1番GR、人間大オークションを開催致したいと思います!!
「若様、いまどちらに?」
───今回も良質な奴隷達を取りそろえる事ができました。
派手な音楽と演出で盛り上がるオークション会場とは対照的に、両替商は冷たさを覚えるほどの静寂に包まれていた。
「そうですか・・・シャボンディ諸島には寄っていかれるのですか?」
次々と舞台に上げられる奴隷達。
爆弾付きの首輪をはめられた彼らの中には、檀上で自害する者もいた。
ローはそれを熱の無い瞳で見つめる。
「若様・・・何故そこまでトラファルガー・ローに───」
歪んだ執着が忍び寄っていることも知らず、彼は大きな水槽に入れられた人魚に見入っていた。
───魚人島からやって来た!!! “人魚”のォ、ケイミー~!!!
“ねェ、ロー。貴方は人魚に会ったことがある?”
“ああ、おれは信じてるぜ!!! だからロー、お前も諦めるなよ!!!”
“私も同じように願っている・・・悪魔の実を食べた貴方にも、海のご加護がありますように、と”
「・・・あれが人魚か・・・・・・」
囚われの人魚よ。
お前は今、何を思う?
隷属への恐怖か?
人間への恨みか?
運命への嘆きか?
それとも・・・
微かなる希望か?
そのどれも、おれは知っている。
お前が売れれば、あの男の懐に相当の金が入るだろう。
背筋が凍るような高笑いが聞こえてくるようだ。
「おれも“そっち側”だったからな・・・分かるぜ」
ローの口元から笑みが消え、復讐の色をした炎が瞳の奥に宿る。
それは、けたたましい叫び声とともに、オークション会場の扉が吹っ飛ばされる、数分前のことだった。