第6章 真珠を量る女(ロー)
翌日の空は、つきぬけるような快晴。
シャボン玉が太陽を浴びて七色に光り、大気はいつもより透明感を増していた。
今日は月に一度の人間オークションが開催される日。
港には天竜人を乗せた船が寄港し、ガラの悪い人攫い達が堂々と“商品”を連れて歩いてるせいか、街は異様なほどザワついていた。
「キャプテン、見て。向こうでケンカが起こってる」
「ケンカ?」
21番GRに入った所で、べポが人だかりを見つけて指さした。
見れば、黒い棍棒を振り回している巨漢の僧侶と、顔面を覆うマスクを被った男が睨み合っている。
「ありゃ、“怪僧”ウルージですね。もう一人は確か、“キッド海賊団”のキラーです」
一触即発の雰囲気に、ペンギンがやれやれと肩をすくめながら言った。
「へェ・・・そいつは面白そうだ。おい、見物していくぞ」
「また出たよ、船長の物好きが・・・」
人間オークションはどうするんすか? と、シャチは呆れ顔だ。
しかし、どちらも派手な海賊だけに、そのケンカが見ものであることは確か。
人の輪から少し離れたところに置いてある木箱にローが腰を下ろすと、クルー達も万が一、船長に“火の粉”が飛んできた時に備え、彼の後ろにずらりと並んだ。
「どっちが強いのかな? 懸賞金はどっちが上?」
「額はキラーの方が上だが、懸賞金で強さの優劣は決まらねェ」
ローの言葉に、べポは“へェ”と頷いた。
確かに体格ではウルージの方が勝っている。
だけど、キラーは表情が見えない分、何を出してくるか分からない恐ろしさがあった。
「どっちかが死ぬまでやるかな?」
「じゃねェと面白くねェだろ」
これは海賊のケンカだぞ、とローは冷酷な笑みを浮かべる。
海軍が存在を確認してから、たった1年足らずで“億超え”となる海賊はそういない。
現在、シャボンディ諸島にはそんなルーキー達が、ローを含めて11人も一堂に会していた。