第6章 真珠を量る女(ロー)
「ロー・・・私は人魚じゃないけれど、この両脚に鱗を彫っている」
クレイオが最後の針をローに刺す。
「だから私も同じように願っている・・・悪魔の実を食べた貴方にも、海のご加護がありますように、と」
だから、どんな絶望にも屈しないで。
貴方の背中に刻んだ覚悟と同じくらい、命を大事にして。
「さぁ・・・刺青が完成した」
クレイオが合わせ鏡で見せてくれた背中には、堂々とした海賊旗のマーク。
大好きだった人が見せた、最期の表情が誇らしげに彫られている。
「・・・・・・・・・・・・」
どうしてもドフラミンゴがいる新世界に乗り込む前に、笑顔を象徴とした海賊の印をこの身体に刻みたかった。
コラさんの“本懐”を遂げる、覚悟の証として───
「クレイオ・・・いや、6代目ホリヨシ」
ローは消毒クリームを塗ろうとしていたクレイオを抱き寄せた。
「ありがとう」
両腕と背中に彫られた刺青は、まさにローが理想とした出来栄え。
「明日・・・出航するときは、見送りに来いよ」
「・・・分かった」
クレイオは、刺青の無いまっさらなローの胸に頬を寄せながら微笑む。
「でも、ヒューマンショップには行かない。私は港で待っているから」
「ああ、それでいい」
明日、人間オークションが終わったら魚人島に向けて出航だ。
だが、この時のローはまだ知らなかった。
その計画は、同じ“最悪の世代”の海賊によって崩れることになる。
そして・・・
クレイオの背後には、決して近づいてはいけない闇が広がっていたことを───