第6章 真珠を量る女(ロー)
翌日、ローの足はクレイオの両替商に向かっていた。
刺青を彫ってからまだ24時間も経っていないから、まだ傷口は乾いていない。
それでも、手の甲なら彫っても大丈夫だろう。
もしかしたらそれは、ただの口実だったのかもしれない。
ローの心に優しく触れようとしてくれた、彫り師に会うための───
だが、店に着いた途端、中から聞こえてきた声は穏やかではなかった。
「フザけんじゃねェぞ、コラ!!!」
どうやら客が暴れているようだ。
ローが眉間にシワを寄せながら中に入ると、数人の大男がテーブルに座るクレイオを取り囲んでいた。
「これほどの宝が、たった10万ベリーとはどういうことだ!! 1000万は下らねェはずだぞ!!」
見たところ、海賊のようだ。
どこぞから奪ってきたのか、テーブルの上には宝石や金貨が乱暴に置かれている。
「これほどの宝って・・・どれもそれほど品質は良くないし、希少性も高くない。装飾も大したことない・・・10万ベリーでも高いくらいよ」
「オイオイ、お前の目は飾りか? その目玉をくりぬいてやろうか」
海賊としては、これから新世界に乗り込むから、少しでも金は持っていた方がいいと思っているのだろう。
残念ながらクレイオはその程度の脅迫で態度を変えるような女ではない。
「どうせ他の両替商でも同じことを言われたからここに来たんでしょ。女一人でやっている店、ちょっと脅せば言い分を押し通すことができるとでも思った?」
「生意気な女だ!!」
リーダー格の海賊が一気に怒りを爆発させ、バンッ!! とテーブルを叩き割った。
「だったらテメェを殺して店の金を奪うまでだ!!」
宝石がバラバラと音を立てながら床に散らばり、クレイオの頭上に剣が振り下ろされる。
「“ROOM”!!」
入り口に立っていたローが咄嗟に能力を発動した、その刹那。
「ロー、大丈夫よ」
クレイオが静かに微笑んだ。