第6章 真珠を量る女(ロー)
その夢はローにとって一番悲しい記憶だった。
真っ白な雪景色の中、懐かしい声が聞こえてくる。
“おれは「海兵」だ”
そんなことは分かっていた。
“ウソをついて悪かった・・・・・・!!!”
謝るぐらいなら、死ぬんじゃねェよ。
約束通り、二人で逃げるぞ。
“お前に嫌われたくなかったもんで・・・!!!”
なに言ってんだよ。
一度も言えなかったけど・・・
伝える暇もなかったけど・・・
海兵だと知っていても、大好きだった。
絶対に死んで欲しくなかった。
コラさん───
次の瞬間、ローの身体が深い水に包まれていく。
そこは深海なのだろうか・・・とても暗かったが、幾千もの水泡が上がっていく方には微かな光が見える。
「オペオペの実」を食べてから一度も入ったことのない、海の中。
力が入らないのに、不思議と恐怖も、息苦しさもなかった。
するとまた、どこからともなく聞こえてくる声が耳をくすぐった。
“この海のどこにいようとも、必ず助けに行くわ・・・”
今まで聞いたこともないほど、美しい声。
“貴方は私に心をくれたから・・・”
いったい誰だ・・・?
なぜ、おれを助けようとしている・・・?
薄れゆく意識の中で、ローの瞳に映ったもの。
それは、月光のように白く輝く一粒の真珠だった。