第6章 真珠を量る女(ロー)
ローが仲間達と合流したのは、その日の夜遅く。
「あ、キャプテン・・・!」
最初に駆け寄ってきたのは、眠そうに目をこするべポだった。
船をコーティング屋に預けているため、ハートの海賊団は無法地帯にある宿に泊まっている。
見たところ仲間の様子がいつもと変わらないことに安堵しながら、ローは粗末なベッドに腰を下ろした。
「両腕の刺青はどう? あの彫り師はまともだった?」
「ああ・・・」
ローが前の彫り師についてさんざん文句言っていたことを知っているべポが顔を覗き込んでくる。
手作業で彫っていくため、1時間に彫れる範囲は限られている。
何時間も全神経を手先に集中させていたクレイオは、両方の前腕の刺青を彫り終えた途端、疲労困憊しその場に座り込んでしまった。
「───あの刺青屋は本物だ。この島で全部彫っていく」
「どれくらいかかりそう?」
「さァ・・・今日の様子だと1カ月はかかるかもな・・・」
その言葉にべポは「えー」と不満そうな声を漏らした。
せっかく新世界への入り口が見えているというのに、1カ月もここで足止めを食らうのか。
だが、白熊とローは長い付き合いだ。
やる気がなさそうな態度を取っていても、一度決めたことは曲げない船長の性格を誰よりも知っている。
「じゃあ、おれも同じ刺青彫ってもらおうかな・・・」
「彫っても、そのモフモフの毛で見えねェだろ!!」
「・・・スイマセン」
べポとシャチのやりとりを尻目に、ローは包帯が巻かれた両腕を見下ろした。
“綺麗に色が入るよう、少なくとも半日は包帯を取らないで”
きちんと消毒をしてからクリームを塗り、包帯を巻くその手つきは、医者のローからみても見事なものだった。
刺青は一種の“怪我”だ。
細菌が入って化膿すれば、せっかくの作品も台無しになってしまう。
「お前ら、もう寝ろ・・・べポ、間違ってもおれの腕の上に転がってくるんじゃねェぞ」
「おれ、そんなに寝相悪くないよ!!」
「だといいがな」
誰もが寝静まった頃。
ローは久しぶりに“昔”の夢を見た。