第6章 真珠を量る女(ロー)
「では、上半身の服を脱いで」
言われた通り、帽子とトレーナーを脱ぐと、無駄な脂肪が一切ない筋肉質の身体が露わになる。
すると、クレイオはローの前に肘掛けを設置した。
「この上に腕を置いて」
タトゥーが入っている方を上にして腕を肘掛けの上に乗せるや否や、鋭い視線が皮膚と絵柄に向けられる。
「見たところ、彫られてから1カ月も経っていないようだけど、傷はもう治っているようね」
「ああ・・・皮膚の再生も終わっている」
「さすが、お医者様・・・」
彫り師はクスクスと笑いながら戸棚からカミソリを取り出し、ローの腕にそれを押し当てようとした。
「何をするつもりだ」
「ここの腕毛を剃らせてもらう。濃くないから、前の彫り師は剃らずに施術したみたいね。だから筋が揺れてしまったのよ」
「・・・なら、自分でやる」
「恥ずかしい? 大丈夫よ、すぐに終わる」
「・・・・・・・・・・・・」
陰毛を剃ろうってわけではないんだ、それ自体はどうってことない。
だが、いくら彫り師とはいえ、腕の毛を女に剃らせるというのは、どうも自尊心が傷つけられるし居心地が悪い。
「動かないでね」
ショリ、ショリ、とカミソリの刃がローの肌を滑っていくたびに、薄い毛の塊が手首の上に溜まっていく。
「お前は・・・性器にタトゥーを彫りたいと言う客がいたら、陰毛だろうと剃ってやるのか?」
「ええ、これも私の仕事の一つ。貴方は患者の性器を見て狼狽える?」
「・・・いや、なんとも思わねェな」
「それと一緒よ」
決して肌を傷つけないよう、丁寧に両腕の毛を剃り終えると、ティッシュで1本残さず綺麗にふき取る。
ローの腕毛は毛質が柔らかくて細く、少し息がかかるだけで吹き飛んでしまいそうだ。
「・・・・・・・・・・・・」
目の前にいる客への配慮からか、処理した毛はすぐにゴミ箱には捨てず、零さないよう丸めたティッシュを半紙の上に置いているクレイオ。
ローはその姿に、羞恥心と興奮が混じった異様な感情を微かながら覚えていた。