第6章 真珠を量る女(ロー)
18平方メートルほどの小さな部屋。
イグサを編んでできた敷物は、たしか“畳”というものだったか。
窓はカーテンではなく、格子状にした木の枠に紙を貼った“障子”というものがはめ込まれている。
ローは以前、文献で読んだ記憶を呼び起こしながら、棚に並べられている壺、針、筆、刀などを見つめていた。
「他のタトゥーショップにはないものばかりでしょ」
「・・・お前の出身地はどこだ?」
「私は別の島の生まれだけど・・・本当のルーツを言ったら、父の名誉を傷つけてしまう」
その言葉に確信を得た。
クレイオは“ワノ国”の血を引いている。
鎖国国家だ、もしその島を出た者がいるとしたら、それだけで罪人となるだろう。
そして、部屋の壁の一番高いところに飾られている“作品”が目に入った瞬間、ローは息を飲んだ。
地上より天に昇らんとする一匹の竜。
角は鹿、身体は大蛇、鱗は鯉、腹は蛟、手は虎、爪は鷹。
絶対的権力を打ち破るがごとく、上昇する猛々しい霊獣は天・地・水を支配する。
「・・・・・・・・・・・・」
額に入っていたのは、人間の皮膚だった。
隙間なく彫られた肌絵は大胆かつ繊細で、美しいという言葉では表現しきれない。
“迫力”という言葉の方が似合うだろう。
事実、ローはあまりにも圧倒され、声を出すことすらできないでいた。
「あそこに飾られているのが、5代目ホリヨシよ」
人間の皮膚をなめして“絵画”として掲げていると聞いたら、大抵の人間は気味悪がるだろう。
そんな奴らを強引にでも連れてきて、見せてやりたい。
これ以上に美しい絵が、この世界のどこにあるというのだ。
死してなお・・・いや、死したからこそ、その迫力が増した刺青。