第6章 真珠を量る女(ロー)
クレイオと共に外へ出ると、べポ達がやきもきした表情で待っていた。
「キャプテン!」
「待たせたな。おれは用ができた、お前らも自由にしてていいぞ」
「なら、おれ達もキャプテンと一緒にいくよ!」
人見知りをしているのか、それとも不審に思っているのか、べポは眉をひそめながらクレイオを見ていた。
「心配するな。それよりお前、さっきも言ったがペンギン達とはぐれるんじゃねェぞ」
“人攫い”に遭ったら面倒だ。
そのままヒューマン・オークションで売られてしまったら、もっと面倒だ。
アイアイと心配そうに返事をするべポ達を置いて、ローはすたすたと歩いていくクレイオの後を追いかけた。
「貴方のお仲間さん達は苦労しているでしょうね」
「どういう意味だ」
「ずいぶんと勝手な性格をしている船長のようだもの」
「・・・今すぐお前をそれ以上喋れなくさせてもいいんだぞ」
身長191センチのローよりも頭一つ分以上小さいクレイオだが、恐れというものはないのか。
クスクスと含み笑いをしながら、ヤルキマン・マングローブの幹に沿って建っている家を指さした。
「あそこよ」
そこは一見して、ただの民家。
タトゥーショップの看板はおろか、そこが職人の工房だということすら分からない。
「・・・・・・・・・・・・」
「貴方、意外と考えていることが顔に出るタイプのようね」
不信感を隠そうとしないローに構わず、ポケットから鍵を取り出す。
ドアを開けた瞬間、医者がかろうじて気づく程度の血と金属の匂いが鼻をついた。
だが、その匂いが“暴力”の痕跡ではないとすぐに分かったのは、彼が海賊でもあるからか。
「さあ、入って」
クレイオに促されるがまま中に入ると、さらに奥へと続くドアが一つ。
その向こうにある部屋を見た瞬間、ローは言葉を失った。