第6章 真珠を量る女(ロー)
「おれは“ハートの海賊団”船長、トラファルガー・ロー」
「ハートの海賊団・・・?」
「こういう店の客の大半は海賊だろう・・・だから、扱いには“慣れて”いるつもりかもしれねェが・・・」
ローは薄っすらと笑うと、身の丈ほどある長刀の鯉口を切った。
「ホリヨシに会わせなければお前を殺す、と言っても、お前は考えを曲げねェか?」
「その大きな刀で私を斬り殺すとでも?」
「喋られる状態のまま、お前の身体をバラバラに切り刻むこともできる」
すると、クレイオはクスクスと笑いながら海賊を見つめた。
「もう少し頭の良さそうな男だと思ったけれど・・・私の“鑑定違い”かしら」
「・・・・・・・・・・・・」
「それをしたら、貴方はホリヨシに会えなくなるだけよ。それが望みならどうぞ、私を殺しなさい」
少しの恐怖も、逃げるそぶりも見せず、再びテーブルの上の天秤を持ち上げる。
決して殺気を漂わせているわけではないのに、壁際へジリジリと追いやられるような圧迫感がローを襲った。
だが、それこそロー自身が求めていた反応。
「思った通りだ・・・」
二ヤリと口の端を上げたまま、親指で押し上げていた刀のつばを元に戻す。
「これで分かった・・・ホリヨシという男は、一人の人間が命を捨ててでも守る価値のある彫り師ということだ」
何がなんでも、この女にホリヨシの所へ案内させる。
さて、どう意識を操作しようか・・・