第6章 真珠を量る女(ロー)
ローは黙ったまま、しばらくクレイオを見つめていた。
窓の日よけを閉めきった薄暗い部屋の中で真珠を量る彼女の腕は白く、一切の穢れがない。
「その、ホリヨシの信念とやらはいったい何なんだ」
「それは貴方には関係のないことよ」
天秤で物の重さを量り、その価値を見極める日々。
そんなクレイオだからこそ、伝説の彫り師ホリヨシは彼女を“審判”に定めたのだろうか。
「べポ、ペンギン、シャチ」
ローは後ろに控えていた三人に声をかけた。
「お前ら、店の外で待ってろ」
「キャプテン・・・」
「この女との話は長くなりそうだ・・・もし30分待って出てこなかったら、遊園地へ行っていい」
べポが心配そうにローを見たが、ここからはクレイオとローだけの“勝負”。
女が言う、“信念”とやらが何か分からないが、こちらも引くわけにはいかない。
どうしても新世界へ入る前に、彫っておかなければならないんだ。
覚悟の証を───
「分かったよ、キャプテン・・・じゃあ、外で待っているね」
「ああ、悪いな」
三人が店から出ていくと、ローは再びクレイオと向き合った。