第6章 真珠を量る女(ロー)
グランドラインとはいえ、まだ昼間だし、海はとても穏やか。
敵船の陰もなく、このまま海上を走っていても問題はないだろう。
その方が暑がりのべポにとってもいいだろうし、この先何が起こるかわからないので酸素は節約しておきたい。
「おい、進路は大丈夫だろうな?」
「うん、大丈夫だよ!」
べポはこう見えても航海士。
医療に関してはまるっきりダメだが、海のことに関していえばこのしゃべる白熊に全幅の信頼を置いていた。
「ログポースが使えない所だから、キャプテンが島の人間のビブルカードを手に入れてくれて助かったよ!」
「ああ・・・まあな」
べポが方位磁石代わりにしているビブルカードは、目指す島に必ずいる“ある人物”のビブルカード。
闇取引をして手に入れたものだが、それはクルーが知らなくてもいいことだ。
認めたくはないものの、こういう時、ドフラミンゴのところで過ごした“2年半”が役に立つ。
「この船は潜水艦だから、“コーティング”してもらわなくても新世界に入れるんじゃないの?」
「バカいえ。新世界への入り口である魚人島は海底1万メートルにある・・・この船が行けるのは、せいぜい1500メートルまでだ」
「じゃあやっぱり“シャボンディ諸島”に行かなくちゃいけないのかー」
シャボンディ諸島というのは正確には島ではなく、巨大樹木ヤルキマンマングローブの集合体。
ただの木であるがゆえに、ログポースが記憶する磁気を発していない。
そのため、そこへ辿り着くのは海賊にとって至難の業だった。
「シャボンディ諸島は海軍本部のマリンフォードも近いから、海兵がいっぱいいるんだろうな」
「あきらめろ、べポ。どのみちあそこには“用”がある」
そう。
ローにはどうしても、その“ログポースが指し示さない島”に行く必要があった。