第6章 真珠を量る女(ロー)
“どうか・・・命だけは・・・!”
怯えた声を思い出しながら、ローはまだ赤くなっている両腕を甲板の柵の上に置いた。
ひんやりとした冷たさが、タトゥーが彫ってある場所の裏側に感じる。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
べポやペンギン、シャチらと一緒に海賊団を結成してから1年足らず。
いつの間にか自分の首には2億ベリーの賞金が懸けられ、誰が呼んだか“最悪の世代”の仲間入りをしてしまった。
「キャプテン? 腕が痛いなら消毒液持ってこようか?」
「いや、大丈夫だ」
あまり感情が表に出る方ではないが、付き合いが長いべポと一緒にいるせいか。
ローは微かに表情を緩めると、“一人にしてくれ”という目を航海士に向けた。
「おれ・・・邪魔だった?」
「そうじゃない。ちょっと考え事をしたいだけだ」
「そっか!」
打たれ弱いべポの扱い方は心得ている。
ヨシヨシと頭を撫でてやれば、嬉しそうにしながら船室へ戻っていった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
一つ前に立ち寄った島で、ローは刺青を入れることにした。
長い年月をかけて練ったデザインで、彫り師の力量を量るために簡単なものを彫らせてみれば、その出来栄えは先ほどべポの前で語った通り。
波音とともに、自分に命乞いをする彫り師の声が再び蘇る。
“海賊相手に下手な仕事をすればどうなるか、分からないわけじゃねェよな?”
“ちょっと手元が狂っただけなんだ、普通の人間には分からねェ! どうか許してくれ!!”
“悪いが、外科医にとって手元が狂うっていうのは・・・”
“ひッ!!”
“───死を意味する”
ローが不気味な光の輪を出した次の瞬間。
彫り師は自分の心臓が“死の外科医”の手の中にあることに気づき、あまりの恐怖にその場で腰を抜かしてしまった。
“た・・・た・・・助けてくれ・・・! なんでもする!!”
“ならば、一つ質問に答えろ”
“質問・・・?”
“お前の知る限りで最高の彫り師は誰だ”
すると彫り師は青ざめながら、ある男の名前を口にした。