第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
ザザーン・・・
ザザーン・・・
初めて彼と出会った海岸。
世間は今もなお、マリンフォードの行く末に気をとられているが、クレイオは浜辺に立ち、海を見つめていた。
“よう”
あの時と変わらない、青い空と海。
彼はそこから現れた。
“おれはエース”
日焼けした肌に、白ひげのマークを背負った彼は、太陽のような笑みを浮かべていた。
「エース・・・」
その海岸に立つクレイオの手には、いまにも消えようとしているビブルカード。
だけどまだ・・・生きている。
あなたは言っていた。
あなたの弟は、必ずこの島にも名前を轟かせると。
それは本当だったわね。
『幼い頃、エースと共に育った義兄弟であり、その血筋は“革命家”ドラゴンの実の息子だ!!!』
「モンキー・D・ルフィ・・・顔はしっかりと覚えたわよ」
彼方から吹く風が波を作る。
ずっと肌身離さず持っていたビブルカードは、マリンフォードの方角に向かって力なく動いていた。
「まだ生きている・・・」
だがその瞬間、右手の手の平に乗せた紙きれが、その端から少しずつ燃え始めた。
「エース・・・!!」
その火はとても熱く、ビブルカードと一緒にクレイオの皮膚を焼いていく。
今、彼の身に起きていること・・・
おそらく、身体が焼かれているのか。
「・・・熱い・・・ッ・・・」
だけど、どんなに熱くてもビブルカードを振り落とそうとはしなかった。
たとえ一生消えない火傷となっても、絶対に彼の“命”を落としたりはしない。
ゆっくりと、ゆっくりと燃えていく白い紙。
クレイオは赤い光を放ちながら灰になろうとしているビブルカードを握りしめ、そっと下腹部にその手を置いた。