第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
そして、とうとう歴史を動かす戦争の幕は切って落とされた。
『おれの愛する息子は無事なんだろうな・・・・・・・・・!!!!』
その姿、まさに威風堂堂。
大海賊団を従えて現れたのは、世界最強の海賊“白ひげ”だった。
「あの人が・・・エースの誇り・・・」
ここ数週間のことが走馬灯のように思い起こされる。
エースが黒ひげとの闘いに敗れ、大監獄インぺルダウンに収監されたというニュースを知ったのは、彼が島を去ってから2週間後のこと。
公開処刑も決まり、彼の死は決定的になった。
泣くだけ泣いた方が、どんなにラクだっただろう。
だけど不思議と、涙は一粒も零れてこなかった。
「先生・・・? 手が震えているよ・・・」
生徒が不安げな顔で見上げてきたが、クレイオはスクリーンに目を向けたままだった。
一瞬も・・・一瞬たりとも見逃してはいけない。
愛する人の命を奪おうとする者達と、それを守ろうとする者達の戦いを。
だが、戦況が激しくなるにつれ、マリンフォードから遠く離れたこの島の電伝虫にノイズが入るようになってきた。
「おい、なんとかしろ!! まったく見えないぞ!!」
「そもそも遠すぎて念波が届かないんだ!!」
スクリーンに砂嵐だけしか映らなくなると、クレイオは子ども達と繋いでいた手を解き、広場に背を向ける。
「先生、どうしたの?」
「戦争は激しさを増している・・・電伝虫では見ることができないだろうから・・・もう行くことにします」
「どこに行くの?」
「・・・彼と出会った場所」
電伝虫の映像がなくても、エースが処刑されれば分かる。
クレイオは小さく微笑むと、静かにその場をあとにした。