第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
「すごく意地っ張りで・・・すごく芯の強い女で・・・・・・」
クレイオ・・・
あの日、眠る彼女をどうしても起こすことはできなかった。
「さようなら」と伝えるということは、もう二度と会わないことを意味する。
それはできなかった。
北の空を見上げれば必ず北極星が輝いているように・・・
どこの海にいようとも、エースにとって変わらぬ大切な場所はクレイオがいる島。
「そいつのためなら・・・自分でも知らなかった力を出せる・・・」
自分が生み出した花火を見つめるクレイオの横顔。
こんなに綺麗な女がいるのかと心が躍った。
この暗くて汚い場所では、あの記憶がさらに美しいものに思える。
「・・・もし、そんな女がいたとしたら・・・おれは自分の命をその女の身体に残すかもな」
エースが残した火種は、もしかしたら彼女の身体の中で新しい命に変わっているかもしれない。
それは誰にも分からないこと。
「おい、エース・・・その話はもしや・・・!!」
「だからよ、ジジィ・・・・・・」
チャリッと鎖が音をたてた。
「もし、本当にどこかの夏島にそんな女がいたとして・・・・・・もし、彼女の腹の中にガキがいたとしたら・・・」
エースは顔を上げ、口の両端を上げた。
その表情を見た瞬間、ガープの背筋が凍る。
「どうか、そいつをよろしく頼む」
それはまさしく・・・
“お前が守れ”
愛するエースを宿敵に託した時の、ロジャーの笑顔そのものだった────