第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
「どうじゃ、エース・・・たとえお前のような死刑囚の子だろうと、生まれて来る赤ん坊に罪はない。老いぼれじゃが、お前の“じいちゃん”として、わしの目が黒いうちはわしが守ろう」
「・・・・・・・・・・・・」
エースは静かにガープを見つめていた。
ロジャーに頼まれたから、この海兵が自分を守ってくれていたことは知っている。
本当に小さかった頃は、会うたびに“ガープおじさんでちよ~”とあやしてくれたのもうっすらと覚えている。
「・・・・・・・・・・・・」
「やはり、お前はまだ若すぎたか・・・」
これでロジャーの血は潰える・・・・・・
海兵と海賊。
敵同士だったが、あの男のことを嫌いではなかった。
ガープが残念そうに腰を上げた、その時。
「たとえば、ある夏島に・・・」
掠れた声で、エースが呟く。
「一人の女がいたとして・・・・・・」
ログポースが指し示したから寄っただけの島。
浜辺でこちらに目を向けている姿を船の上から見つけた時、どうしても彼女のところに行かなければならないと思った。
理由などなく、ただ本能のように。
「そいつはガキに勉強を教える教師で・・・海賊なんか相手にするような女じゃねェのに・・・」
“憎むべき存在とされる人間だろうと、本当のところは実際に会ってみないと分からないのかもしれない”
「おれが海賊だと知っても、内面を見てくれようとする・・・」
“世界が驚くような、大きなことをできる人間は少ない。けれど、誰の目にも留まらない小さなことを、心から大切にできる人間も少ない”
「名声を追い求め、世界に自分の存在を認めさせようとしていたおれには考えもつかねェようなことを言う・・・」
“夢には、境遇なんて関係ないんじゃない?”
結局、自分が海賊王の息子だとは明かさなかったが、それを知ったとしても彼女は同じ言葉を口にしただろう。