第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
“おれとお前は何十回と殺し合いをした仲だろう!!?”
“おれはお前なら仲間程に信用できる!!”
ロジャーはロジャーなりに、生まれてくる我が子を気にかけていた。
“お前が守れ!!”
だからこそ、腹心のレイリーではなく、敵だったガープに大事な命を託した。
“勝手な事をいうな!!!”
“いやァ・・・やってくれるさ・・・・・・!! おれの子を頼んだぜ!!”
おそらく愛していたんだ。
まだ顔も見ぬエースのことを。
そのことを知らぬは息子ばかり。
だが、誰もそれを責めることはできないだろう。
「おれのオヤジは・・・・・・“白ひげ”一人だ・・・!!!」
ガープはそれ以上、何も言えなかった。
インぺルダウン“LEVEL6”の囚人達が放つ空気はとても冷たく、ゾッとするようだ。
こんな場所に手負いの状態で収監されているエースも、体力の限界だろう。
ロジャーと最後に話した時と同様、エースにも“免れぬ死”が待っている。
「なァ、エース・・・一つだけ聞いてもよいか・・・?」
「まだ何かあんのか、ジジイ・・・」
「お前・・・どこかにガキを残しちゃいないだろうな?」
唐突すぎる質問に、エースは驚いたように顔を上げた。
冗談かとも思ったが、ガープは真剣な顔をしている。
「いきなり何を聞いてきやがる・・・ボケたか、クソジジィ」
「質問に答えろ、エース。お前くらいの年なら、深い仲になる女性がいてもおかしくなかろう。どうなんじゃ?」
「そうか・・・海軍は、海賊王の血を根絶やしにしてェってことかよ・・・?」
「違う!!!」
ガープは看守達に聞こえぬよう、珍しく声を抑えながら真っ直ぐとエースを見た。
「わしはなァ・・・もしあいつとお前の血がどこかに残ってるなら、それを守りたいと思っただけじゃ」
ロジャーめ・・・このわしをいいように使いやがって・・・
“おれの子を頼んだ”ということは、エースの遺志も守らなければいけないということじゃろう。