第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「おい、大丈夫か」
慌てて駆け寄ってみれば、娼婦は狭いシャワー室の中に蹲っている。
とりあえず出しっぱなしの湯を止め、その身体を抱き起こすと、全身が高い熱を帯びていた。
「なんだお前、熱あんのか」
こんな時どうしていいのか分からないが、このまま放っておくわけにもいかないだろう。
とりあえず運び出し、ベッドの上に寝かせた。
すると目に飛び込んできたのは、骨の浮き出た身体に這う無数のミミズのような腫れ。
鞭で強く叩かれた痕のようだ。
さらに、両手首と足首には縄で縛ったような紫色の痕がある。
「・・・すいません・・・」
意識はあるのか、娼婦はゾロと目を合わせないまま呟いた。
「店のやつ、呼んできた方がいいか? おれの仲間に医者がいるが・・・」
「いいえ、大丈夫です・・・叩かれた後にシャワーを浴びるといつもこうなので、気にしないでください」
叩かれた、という類のものではない。
これは明らかな拷問だ。
ゾロは眉間にシワを寄せた。
「それを分かっていて、なんでシャワーを浴びた」
「・・・お客さんがそう望んだから」
「おれが望んだから・・・? じゃあ、その身体の傷も、客が望んでつけたってことかよ?」
「・・・・・・・・・・・・」
見れば、新しい傷の下に折り重なるようにして、古い傷や痣がある。
前の客がつけたものか、それとも別の客がつけたものか・・・
いずれにせよ、抵抗しない彼女に暴力を振るい続けたのだろう。