第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
「おれは昔、誓ったことがある。思いのままに、誰よりも自由に生きる。悔いは絶対に残さねェ」
それは、何一つ不自由のない貴族として生まれながら、自由を求めて海に出ようとした、亡き兄弟に捧げた誓い。
「17歳で海に出て、いろんな奴に出会った。裏切りやがった奴もいる・・・殺し合った奴もいる・・・けど、出会ったことを悔いた奴はいねェ」
「エース・・・」
「おれは海に出て、こうしてお前に出会った。これも絶対に“悔い”にはしねェ」
夏島に生まれたクレイオ。
ハイビスカスに囲まれて生きる彼女を見ていると、まるで母親と対面しているかのような安らぎを覚える。
「お前を愛する気持ちが自由の妨げになるんじゃねェ。お前を愛しているという気持ちを否定する方が、おれにとっちゃ自分を裏切ることになるんだ」
たった一つだけ。
自分とゴールド・ロジャーに共通点があるとすれば・・・
ともに夏の太陽を浴びる女を愛したということ。
「けどな、おれは死なねェ」
ニッと笑って、クレイオの鼻の頭をつまむ。
「おれにはオヤジを海賊王にするって夢があるし、世話の焼ける弟もいる。だから、お前のことだけで死んでられねェんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
ああ・・・この人は本当に自由なんだ、とクレイオは思った。
自分のことを愛していると言ってくれているのに、その手を決して掴ませてはくれない。
命をかけて自分の思い通りに生きる彼を、誰がつなぎとめておけるだろう。
半端な覚悟ではないからこそ、彼にはこのような生き方をすることができる。
だから・・・悲しいことに、ここまで惹かれてしまうのね。
「おれはお前を殺さねェし、お前を殺そうとする人間がいたら灰も残さねェほど焼き尽くす。そんだけ分かってくれりゃいいんだ」
海賊に愛されるのも悪くねェだろ?
エースはそう言って笑った。