第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
「・・・ああ、結局おれは約束を破っちまったな」
クレイオの中から肉棒を抜き出し、隣にゴロンと横になる。
狭いベッドだから右半身を下にして彼女の方を向いた。
「お前に手を出さないって条件だったのによ・・・我慢できなかった」
男のくせに約束を守れなかった、とエースは眉間にシワを寄せた。
だが悔いはねェぞ、と言う海賊に、クレイオは鼻で笑う。
「なに言っているの、エース」
「・・・?」
「私があなたに出した条件はこうだったはずよ?」
“寝床が必要なら、あなたが私を犯さないという証を見せて”
「私は自分から望んであなたに抱かれたの。“犯された”わけじゃない」
さっきまで“離れたくない”と言っていた、素直なクレイオはいったいどこへ行ってしまったのか。
いつもの気の強そうな顔でエースを見つめている。
「だからあなたは約束を破ってなんかいない」
「・・・モノは言いようだな」
クレイオに指一本触れるつもりがなかったのは、本当だ。
だけど、生まれて初めて誰かと一緒にいたいという気持ちが湧き上がった時、次第にその人の身体を求めてしまうようになるのは、自然な流れなのかもしれない。
「なあ、さっきは本気にしてもらえなかったが・・・」
クレイオの髪を指で掬いながら、真剣な瞳を向ける。
「おれは、お前を愛している」
本気に捉えてもらえないのは分かっている。
自分は海賊で、クレイオは普通の女だから仕方のないこと。
でも・・・
「笑ってもいい・・・バカにしてもいい・・・けど、信じて欲しい」
どこにも逃がさないように抱きしめながら、その想いを伝える。
「おれが愛していると言った時は、それが嘘じゃねェって・・・どうか信じて欲しい」
エースは絞り出すようにそう言うと、クレイオの唇にキスをした。