• テキストサイズ

【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)




“まだよ・・・まだ生まれてきてはダメ・・・”


「だからおれはお袋の名を継いでいる。感謝してもしきれねェからな」


“女の子なら『アン』・・・男の子なら・・・・・・・『エース』・・・彼がそう決めてた・・・”


「一度くらいは顔を見てみたかったが、写真も残ってねェんだ」


“───この子の名は・・・『ゴール・D・エース』”


「エース・・・あなた・・・」


“───彼と私の子・・・”


もし、あの鮮明な“夢”が誰かの“記憶”だとしたら・・・
もし、その“記憶”の持ち主が何かを伝えたくて、私に“夢”を見せたのだとしたら・・・

あなたは・・・あなたは、世界最悪の───


「クレイオ」


エースはクレイオの思考を遮るように、静かな瞳で見つめた。


「この身体や声や性格は、“誰か”から譲ってもらったもんじゃねェ。おれは“ポートガス・D・エース”という名で、最高の名声を手に入れてみせる」


ニッと笑うその表情の裏に隠された、揺るがぬ覚悟。

そうだ、いったい何を考えていたのだろう。
エースはエース。

“家族”想いの優しい海賊だ。


「海賊の言葉をどこまで信じてもらえるかは分からねェが・・・」

天を仰ぐように横たわるクレイオに唇を寄せる。
もう少しで触れようというところで、最後の確認をするかのように言葉を続けた。


「お前を愛している」


これは嘘偽りのない想い。
たとえ名声が手に入らなくても、お前だけは手に入れたい。

そう、たとえ“一晩”だけだとしても。

すると、クレイオはクスクスと笑った。

「なにそれ。女を悦ばせるための常套句?」
「違う、そんなんじゃねェ」

やはり信じてもらえないか。
当然だ、“愛している”という言葉は一種の約束のようなもの。

自分の一番弱い部分を曝け出し、相手と運命をともにする誓いの言葉だ。
それゆえに、愛する者こそがエースにとって最大の“弱点”となり得る。

ならばむしろ、信じてもらえない方がいいのかもしれない。

そう思った、その時。





/ 1059ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp