第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
クレイオを一人にしないという約束。
「そいつはしばらく守れそうにねェから、代わりにこれをやる」
エースはゴソゴソとポケットをまさぐると、汚い紙切れを取り出してクレイオに手渡した。
「・・・ビブルカード?」
だけどそれは、白ひげのものとは少し違っていた。
その小さな紙はエース自身に向かって動いている。
「これはおれのビブルカードだ。どれだけ離れていようと、こいつが必ずおれの所在を示してくれる」
「エースの・・・」
「この世界でこれを持っているのは、お前のほかに弟のルフィだけだ」
出来の悪い弟を持つと兄貴は心配なんだ、とエースは笑った。
だけどそれだけではないはず。
ルフィと出会う前の自分は、悪辣なガキだった。
心を許していたのは親友のサボだけ。
弱虫で甘ったれなルフィとの出会いが教えてくれたのは、誰にでも“愛する者”が存在するということ。
そして、少しずつ少しずつエースは変わっていった。
愛する者を守るためなら、いくらでも強くなれる。
愛する者を失うくらいなら、いくらでもこの命をかけられる。
ルフィ、オヤジ、白ひげ海賊団の仲間たち。
そして、もう一人・・・
「クレイオ、お前にこれをやる」
この世界のどこにいても。
「その紙切れがおれとお前をまた引き合わせる」
クレイオは大事そうにエースのビブルカードをポケットにしまうと、嬉しそうに微笑んだ。
「いつか会ってみたい、その弟さんに」
するとエースは遥か海の彼方を見つめ、目を細めた。
あの泣き虫は今、どこで何をしているんだろうか。
アラバスタで再会することができたが、この広い海原でお互いに海賊をやっているんだ、なかなか会うことはできないだろう。
だが・・・
「そのうち、このへんぴな島にもあいつの名前が届く日がくるさ。おれの弟だからな」
きっと、世界を震撼させるような騒ぎを起こすだろう。
もしかしたら、オヤジの手にも負えないかもしれない。
あいつの“夢の果て”を見るのが、楽しみだ。