第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
───ドォン!!
エースの背後に広がる海に、大きな音が響く。
「・・・花火?」
二人でそちらの方を見ると、海の上で打ち上げ花火が上がっていた。
「ああ・・・忘れていた。夏祭りのメインイベントの一つに、海軍が打ち上げる花火があったんだ」
「面白そうだ。なぁ、外に出て見物しようぜ」
「花火を?」
「そこの岬で眺めるくらいなら、誰にも見つからねェだろ?」
退屈していたせいもあるのか、エースは目を輝かせながらイスから立ち上がった。
そんな顔を見せられたら“ダメ”とは言えなくなってしまう。
二人で岬に出ると、町の方から響いてくる祭囃子と夜風がとても心地よかった。
沖の方に停泊している軍艦からは次々と花火が打ち上げられ、夜空を彩っている。
エースとクレイオは岬の先端に腰を下ろし、夜空に咲き乱れる大輪の花を眺めていた。
「た~まや~!!」
「・・・何それ」
「ワノ国では花火が上がると、こうやって掛け声をするんだ」
「ワノ国・・・新世界の島? 知らなかった」
「おれでもお前に教えられることがあるんだな」
得意げな顔をしているけれど、実際に様々な場所へ足を運び、様々なものをその目で見ているエースの方が、クレイオよりもずっと多くの“知識”を得ているだろう。
「・・・時々、あなたが海賊だということを忘れてしまいそうになる」
「そうか?」
「大人や子どもに構わず、誰とでもすぐに打ち解けて・・・そうやって笑っている顔を見ると・・・極悪非道の犯罪者とはとても思えない」
背中には大きな髑髏マークを背負っているけれど・・・
手配書には想像もつかないほどの金額が書かれているけれど・・・
あなたは私の前では、図々しくて、大ざっぱで、少しだけ礼儀正しい人。
そして、何より・・・
その笑顔で私の目を、その言葉で私の心を、惹きつけてしまう。
エース・・・
いったいどうすれば、これ以上あなたを好きにならずにすむのだろう。