• テキストサイズ

【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)




「どうした?」

名前を呼んだまま黙り込んでいるクレイオを見て、エースは首を傾げながら微笑んだ。

彼の顔を見ていると吸い込まれそうになる。

尖ったナイフのように鋭い視線、何物をも恐れない豪胆さを見せたと思えば・・・
不安そうに何かを求める瞳、失うことを酷く怯えているような脆さを伺わせる。

そして、今見せている表情は後者。

そんな顔で微笑む時、私はあなたの手を掴みたくなる。


“大丈夫、あなたはここにいてもいいのよ”と伝えたくなる。


「・・・何でもない。忘れて」

「なんだよ、気になるだろ。お前にとっちゃ何でもねェことが、おれにとってはそうじゃないかもしれねェ」

「さあ、どうかしらね」

「話す気はねェ・・・か」

エースは残念そうに肩をすくめると、小さな声で“意地っ張りだな”と呟いた。
夏島の夜風は少し湿っているが、息苦しさを覚えるのはそのせいではないだろう。
クレイオは顔を背けるように、開いたままとなっていた本に目を落とした。

「なぁ、お前さ」

こちらをジッと見つめてくる、海賊とは思えないほどの優しい瞳。

視線を通わせたらいけない。
もし目を合わせたら、必死で心の周りに張っている防御壁を、透明にされてしまいそうだから。


「特別な男はいねェのか?」

「え?」


思ってもみない質問に、声が少し上ずってしまう。
なんでそんなことを聞いてくるのだろうか。


「せっかくの祭りなら恋人と行きそうなもんだろ。だけどお前、おれと一緒にいるから」

「・・・一緒にいて欲しいって言ったのは、そっちでしょ?」

「そりゃそうだ」

クスクスと笑っているエースが求めている答えは、そんなものではないことくらい分かっている。
そして、彼の質問にちゃんと答えたいと思っている自分もいる。


恋人はいない。
でも、どこにも行って欲しくない、そばに居て欲しいと思う人ならいるわ。


───それくらいなら、少しは想いを込めて伝えてもいいだろうか・・・?


「私には・・・」


クレイオが口を開きかけたその瞬間。




/ 1059ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp