第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
一週間の航海。
てっきり荷馬車一個分の食料や水を用意するものかと思えば、エースが買ったのは水袋を2つとリンゴを10個。
足りるとはとても思えなかったが、本人は大荷物なんて煩わしいだけとしか思っていないようだ。
「おれの船は“メラメラの実”の力を動力にしてるから、4日ありゃ着く。腹減ったら海王類でも焼いて食うから大丈夫だ」
旅慣れをしているのもあるだろうが、これだけ軽装で本当にグランドラインを渡っていけるのか心配になる。
とりあえず、飲料水だけは余分に持たせるため、早めに店じまいをしようとしていた商店にクレイオだけ駆け込んだ。
そして、代金を払おうとすると、顔なじみの店員が声を潜めながら話しかけてくる。
「ねェ、先生。ここ数日、先生と一緒にいる男の人のことだけど・・・」
クレイオの教え子の母親である店員は、この町では情報通で通っている。
“男の人”が、外で待っているエースを指していることは明らかだった。
「あまり関わらない方が良いよ」
「・・・どういうことですか?」
「なんでも海賊じゃないかって噂さ。しかも、あの“白ひげ海賊団”のクルーだと疑っている人もいるんだよ」
「・・・まさか・・・あの人はただの旅人ですよ」
この島は大きくない。
噂は一日と立たず、全土に広がってしまうだろう。
「良い人そうだから、私も信じたくはないけどね。息子が学校で一緒に勉強して楽しかったって言っているし」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも・・・昨日ウチに先生と一緒に寄ってくれた時、あの人、私に聞いたんだよ」
“なぁ、おばちゃん。最近、黒ひげって名乗る海賊がこの島に来なかったか?”
「もし海賊なら、なんで先生に近づいたのか分からないけれど、海軍に通報した方がいいよ」
「ありがとう・・・でも、大丈夫です」
やはりエースが持つ、“海賊”というオーラは隠そうにも隠せないのか。
5億5000万ベリーの賞金首だ、彼のことがバレたら島は大騒ぎになるだろう。
明日、無事に出航するまで・・・
私が彼を守らなければ。