第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
朝だろうと、昼だろうと、夜だろうと、エースの食欲は変わらないようだ。
焼いたそばから胃袋に押し込まれていくパンや目玉焼きを見ながら、クレイオはため息を吐いた。
「本当に・・・呆れるくらい食べるのね」
「そうか? お前の飯がうまいからだ」
「あなたの食べっぷりを見ているだけでお腹がいっぱいになる」
「そいつは良くねェな。飯はちゃんと食わなきゃだめだぞ」
・・・まさか、この男に説教されるとは。
言い返す気にもなれず、クレイオはエースと向かい合わせに座りながらトーストを齧った。
するとどうだろう。
「・・・おいしい」
いつもは一人で食べる朝食。
ものは同じなのに、味がまったく違うような気がする。
「だろ! それはおめェ、おれと一緒に食ってるからだ!」
「・・・は?」
「一人で食うより、二人で食う飯の方がうまい! 大勢ならもっとうめェぞ」
「それは白ひげや仲間達のことを言っているの?」
すると、大きなハムを噛み千切っていたエースは、一瞬だけ表情を曇らせた。
そういえば、エースはなんで一人で旅をしているんだろう?
その理由を聞いたことは無かった。
聞いていいものかどうか迷っていると、それを切り出す前にエースが口を開いた。
「そういや、今日は学校あるのか?」
「ええ、あと30分くらいしたら家を出る」
「だったら、おれもお前の授業受けてみてェ」
「は? ダメに決まってるでしょ」
7歳から12歳までの子ども達が通う学校だ。
海賊と子ども達を同じ教室に入れるわけにはいかない。
「絶対に来ちゃダメよ!!」
と、何度も何度も念を押したのに───
「おれの名はエース。どうぞよろしく」
1時間後、ポカンと口を開けている生徒達に向かって、礼儀正しく90度の角度でお辞儀をしているエースがいた。