第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
朝の日差しが目に刺さり、クレイオはその不思議な夢から覚めた。
「ん・・・」
ベッドから身体を起こすと、閉めたはずのカーテンが開いている。
なんで? と眉間にシワを寄せ、窓から床の方へと視線を落とした瞬間、驚きのあまり叫び声をあげそうになった。
「ぐー」
「エッ・・・エース・・・!!」
別室のソファーに寝床を作ったはずなのに、なぜかクレイオの部屋の床で毛布に包まっている。
まさか、夜中のうちに忍び込んできたのか?
「ちょっと・・・なんで入ってきてんのよ」
慌ててパジャマの上からガウンを羽織り、イビキをかき続けているエースを蹴っ飛ばそうと近づいた時だった。
“おれの子を頼んだぜ!!”
「え・・・?」
ドクンと心臓が大きく鼓動する。
「なに・・・?」
今の声・・・夢の中で聞いた声と同じ・・・?
「ぐーぐー」
この部屋には熟睡しているエースと自分しかいない。
窓は閉まっているし・・・いったい、今の声はどこから・・・?
「エース・・・」
見れば、とても無邪気な顔で寝ている。
もしかして・・・一人が寂しかったから、人の温もりを求めてここに来たのだろうか。
「そんなわけないか」
たとえ下心があったにしても、クレイオには指一本触れずにいたのは確かだ。
指先でそっとそばかすに触れると、くすぐったそうに首をすぼめている。
「・・・ん・・・」
まったく・・・5億5000万ベリーの賞金首が聞いて呆れる。
これじゃ、私にだってあなたの首を取ることができる。
「エース、起きて」
「ん・・・朝か・・・?」
目を擦りながら、大きなあくびを一つ。
そして、クレイオが自分の顔を覗き込んでいることに気が付くと、右手を伸ばしてきた。
「おはよう」
まるでそれが朝の儀式かのように。
エースはクレイオの髪を撫でながら、ふわりと微笑んだ。