第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
「海兵?」
「正確には“海兵だった”ね」
「だった?」
「死んだのよ。海でね」
その瞬間、エースの表情が曇った。
予想通りの反応に、クレイオの口元に笑みが浮かぶ。
「誤解しないで、海賊に殺されたわけじゃないから」
「・・・じゃあ、なんで?」
海兵だからって、誰しも海賊と戦って立派な死を遂げられるわけじゃない。
「ただの海難事故。この島から海軍本部へ向かう途中の航路で嵐に遭って、船が沈没したの」
「そりゃ・・・大変だったな」
「あんなに穏やかに見えても、海は簡単に人の命を奪う。そういう意味では、海賊のあなた達を尊敬するわ」
特に悪魔の実の能力者なら、さぞ大変でしょうね。
「10歳の時に父が死んでからは・・・教師だった母が女手一つで私を育ててくれた」
「・・・・・・・・・」
「その母も2年前に死んで、私がその後を継いだのよ」
「それでここに一人で住んでいるんだな」
「なにその顔・・・同情? やめてよ、一人には慣れているんだから」
海賊の憐みは受けたくないとばかりに眉間にシワを寄せると、エースが右手を伸ばしてきた。
「!!」
クレイオの手を握る、海賊の手。
“メラメラの実”の能力者であるせいか、少し体温が高い。
「何するの?」
「いや、なんかお前・・・すげェ寂しそうな顔していたからさ」
「手を放して!」
「じゃあ、そんな顔すんな」
“笑えよ”と促されるが、そう言われると余計笑顔になれないものだ。
無理やり手を振り払い、エースから数歩離れた。