第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
結局、手配書を見たことを伝えられないまま、二人は家に着く。
エースはクレイオが料理をしている間、窓辺に置いてあるイスに座りながら、窓の向こうをジッと見つめていた。
視線の先には、真っ赤なハイビスカスと、かつて海賊王が制した海しかない。
だけど、エースの瞳にはそれ以上のものが映っているように思えた。
「エース」
声をかけると、“ん?”と振り返って微笑む。
「何を見ているの?」
「別に。ただボーッとしていただけだ」
「・・・・・・・・・・・・」
それが嘘だということくらい分かる。
常に明るい彼が、ゴールド・ロジャーの名前を出した時だけ、その表情に影を落としていたのと同じ。
それに・・・
どうして、クレイオが海軍駐在所に寄った理由を聞かないのだろうか。
「白ひげが恋しいの?」
少し冗談めいた口調で言うと、エースは可笑しそうに笑った。
「親父が恋しくねェ息子なんかいるかよ」
それが冗談だろうと、本心だろうと関係ない。
その言葉には、エースの白ひげに対する強い信頼と愛情が込められていた。
「ところで、お前の親父はどういう奴なんだ?」
「それは聞かない方がいいと思う」
「なんで?」
「だって・・・」
私の父親は、海兵だから───