第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
「22年前に処刑された“海賊王”、ゴールド・ロジャーのこと・・・?」
クレイオが聞き返すと、エースはコクンと頷くだけで何も言わない。
ゴールド・ロジャーとライバル関係にあった白ひげの仲間だから、そんなことを聞くのだろうか・・・?
「この大海賊時代の原因となった、極悪非道の大犯罪者・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも」
サァッと吹き付けた潮風が、道端に群生しているハイビスカスの花を撫でるように揺らす。
クレイオは髪をなびかせながら、押し黙っているエースを見つめた。
「憎むべき存在とされる人間だろうと、本当のところは実際に会ってみないと分からないのかもしれない」
“凶悪”というレッテルを張られ、高い懸賞金を懸けられていても、町を歩くだけで愛される海賊もいることを知った。
もし、あなたに出会っていなかったら───
「だから私が思うゴールド・ロジャーとは、誰も成し遂げられなかったことを成し遂げ、あなたが命よりも大事だと思う海賊と互角に戦った男・・・ってところかしらね」
もし、あなたに出会っていなかったら、私はこうは思っていなかった。
大海賊時代の原因となった、極悪非道の大犯罪者”という答えでとどまっていただろう。
「・・・そうか・・・・・・」
クレイオの答えが満足のいくものだったのか、そうでなかったのかは分からない。
ただ、エースはそれ以上掘り下げて聞くようなことはしなかった。
「まぁ、今の回答は70点ってところか、“クレイオ先生”」
「何よそれ、こういう問題に正解はないんじゃない? だいたい、なんで30点も引かれているの?」
ムッとしながら睨んでくるクレイオの頭を、エースは笑みを浮かべながらグリグリと撫でる。
「白ひげはゴールド・ロジャーと互角じゃねェ。あの男こそが最高の海賊だから、そこで減点だ」
「採点に私情を挟むなんて、あなたは教師に向いてないわね」
「いいんだ、おれは海賊だから」
まるで太陽のような笑顔。
白ひげやその仲間達から深く愛されているだろうことは、その顔を見るだけでじゅうぶん分かった。