第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
一緒に町に出てみて、再認識した。
エースという海賊は、とにかく人懐っこい性格をしている。
肉屋だろうが、八百屋だろうが、魚屋だろうが、行った先々の店でそこの店主と仲良くなってしまう。
八百屋では、“おばちゃん、腰をやっちまうぜ”とさりげなくジャガイモの詰まった箱を代わりに運ぶものだから、女主人にすっかりと気に入られ、大きなスイカをオマケにもらってきた。
「こんだけ飯があったら、今日は宴が開けるな」
「ちょっと、なんで買ったもの以上の荷物を持っているの? まさか、盗んできたんじゃ」
「違う、もらったんだ」
そう言って大きな肉の塊を背負いながらニコニコしているが、この男が海賊だと知っていたら、町の人だってこんなにオマケはしなかっただろう。
「お、あそこから美味そうな匂いがするな。ちょっと行ってくる」
エースはゆさゆさと荷物を左右に揺らしながら、焼き鳥を売っている屋台の方へと走っていってしまった。
「・・・まったくもう・・・」
さっきあれほど食べたというのに、彼の胃袋はいったいどうなっているのか。
一人残されたクレイオは、すぐ横の建物の看板に“カモメ”のマークがついていることに気が付いた。
「海軍駐在所・・・」
ここなら・・・きっとあれが・・・
エースは焼き鳥屋のおじさんと何やら楽し気に会話している。
今なら彼に気づかれることなく中に入ることができるだろう。
「・・・・・・・・・・・・」
クレイオはエースの目を盗み、さっと海軍駐在所のドアをくぐった。