第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
普通の火よりも威力は強いのか、エースの出した炎はもう雑草を焼き尽くそうとしている。
この力があれば一本ずつ手で抜いていかなくても一瞬にして焼き払うことができただろうに・・・
「どうした、ビビってんのか?」
「そんな力を見せられて・・・怖がらない方がおかしいでしょ」
「別にお前を傷つけるモンじゃねェから安心しろよ」
全ての雑草が灰になったところでエースが手をかざすと、火は瞬く間に消えていった。
「こんなもんか?」
「・・・ええ」
白ひげ海賊団の2番隊隊長にして・・・悪魔の実の能力者・・・
どうやらエースは、思っていた以上に恐ろしい男のようだ。
「じゃあ・・・これで終わりね」
「ん?」
クレイオはポケットから一枚の紙きれを出し、それをエースに手渡した。
「これはお前・・・」
“お腹すいてるなら、あなたが私を殺さないという証を見せて”
それは、クレイオが出した条件に対するエースの答え。
“じゃあ、こいつをお前に預けるよ”
“なに、この紙・・・動いている、気味悪い・・・”
“これはビブルカードっていって、この紙の持ち主への道標になるもんなんだ”
“ちょっと・・・海の方を指しているわよ? いったい誰の・・・”
“こいつは白ひげのだ”
その瞬間、クレイオはとんでもないものを手の平に乗せていることに気が付いた。
“いつか、おれがオヤジの船へ帰る時に使う”
エースは懐かしそうに瞳を揺らしながら、海の方角を見つめていた。
“そいつをどっかに隠しとけばいい。そしたらおれは、お前を絶対に殺せない”
オヤジのところに帰れなくなるからな、と言って笑った。