第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
“次の島のログ(記録)がたまるのは5日後。いいこと、この港町から絶対に出ちゃダメよ! 5日後に戻ってこなかったら置いてくからね!”
ナミはわざわざゾロに向かい、念を押すように言っていた。
まったく、グランドラインというのは厄介な海だ。
次の島に行こうにも、ログポースにログがたまらなければ身動き一つ取ることができない。
とりあえずそれぞれ小遣いを貰い、自由行動となったものの、ゾロと一緒に歩いていたはずのウソップとルフィはすぐに姿が見えなくなってしまった。
ナミとチョッパーもどこかに行ってしまったが、サンジが付いているから放っておいてもいいだろう。
まったく、世話のやける奴らだ。
島に着いて早々、迷子になりやがって。
ゾロは、自分のいる酒場が港町から山一つ越えた場所にあることも知らず、2杯目のビールを飲みほした。
さて、どうするか。
ここへ来る途中、喧嘩を売ってきたチンピラを返り討ちにしたら、ご丁寧にも有り金を全部置いていってくれた。
おかげで、懐は温かい。
メリー号ではロビンが船番をしているが、アラバスタで“敵”として現れた彼女にまだ心を許しているわけではない。
どうせルフィ達も戻ってこないだろうし、あの女と船の中で一晩過ごしたいとも思わない。
「なにより、帰るのが面倒臭ェ。野宿しないで済むってなら、そっちの方がいいか」
“帰り道を知らない”ということは抜きにして、ゾロはこの酒場で夜を明かすことを決めた。