第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
“夏島”に分類されるこの島の建物は、強い日差しで内部が高温になるのを防ぐため、壁に石灰が塗られているのが特徴。
クレイオの家の壁も真っ白で、ウルトラマリンの色をしたドーム型の屋根が乗っている。
「ウメェ・・・!! これ、この島独特の料理か?」
よほど腹が減っていたのか、エースは出された料理を片っ端から平らげていった。
特に、ジャガイモとナスにミートソースとホワイトソースをかけて焼いた風土料理を気に入ったようだ。
「そうよ、ムサカってい」
「グー・・・」
「はあ?!」
ね、寝ている?!
自分から料理について質問してきたというのに、その答えを聞く前に糸がプッツリと切れた操り人形のように顔を皿の中に突っ込んでいる。
しかも、ジャガイモが刺さったフォークはしっかりと握ったまま。
「ちょ、ちょっと!」
ゆすってもまったく起きる気配がない。
い・・・息はしているようだが・・・
完全な空腹からいきなり大量の飯を食べたせいで、ショック症状を起こしたのだろうか。
さすがに心配になっていると、エースは突然ムクッと起き上がった。
そして、ボーっとした目で辺りをキョロキョロと見渡す。
「いやー、まいった・・・寝てた」
「はあ?!」
冷めた性格のクレイオが、こんな声を何度も上げるのは滅多にないことだ。
どうもエースと一緒にいると調子を狂わされてしまう。
しかし、当の本人はいたってマイペースだった。
「ウメェ! これ、この島独特の料理か?」
「・・・だから、ムサカっていう料理だって言ってるでしょ。人が説明しているというのに途中で寝るんだから」
「そうだったのか、そりゃ失礼」
パンを頬張りながらペコリと頭を下げている姿を見ていると、本当にこの人は海賊なんだろうかと疑ってしまう。
図々しくて、マイペースで、礼儀正しいエースに、気付けばクレイオからも笑みがこぼれていた。