第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
牛の頭蓋骨風の装飾が施されたオレンジ色の帽子を被り、黒いハーフズボンとブーツを履いているエース。
逞しい筋肉に覆われた上半身は裸で、左上腕には「ASCE」のタトゥーがある。
クレイオはそれが少し気になった。
自分の名前ならば、「ACE」と綴るのが正しい。
わざわざ「S」をバツ印で消しているということは、間違ったのか、それとも意図的なのか・・・
タトゥーというなら、彼は背中にも強大な力を誇示するかのように大きく刺青を彫っていた。
「白ひげ・・・」
クレイオがそう呟くと、潮に流されないように小舟を岸の高い所へ運んでいたエースが嬉しそうに振り返った。
「お前、オヤジのことを知っているのか? こりゃ嬉しいな」
「このグランドラインで、世界最強の海賊エドワード・ニューゲートのことを知らない人間はいない。貴方、その彼を“オヤジ”と呼ぶという事は・・・」
「おれは白ひげ海賊団2番隊隊長だ」
まったく隠す風もなく、屈託のない笑顔で素性を明かしたエースに、クレイオは驚きのあまり言葉を失った。
白ひげ海賊団といえば、多くの“億超え”賞金首を擁する大海賊団だ。
そこで隊長を任せられているなんて、この人はいったいどれほど悪名高い海賊なのだろう。
しかし、不思議と彼を前にして“怖い”という感情は湧き上がらなかった。