第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
“お前を追いかけなかったら、おれは一人になる”
泣き虫で、甘ったれで、弱虫だった。
それでも・・・
“一人になるのは痛ェのより辛ェ!!!”
おれがいれば辛くないのか。
おれがいないと困るのか。
お前はおれに生きててほしいのか。
そう問いかけたエースに、ガキは迷わず頷いた。
“当たり前だ!!”
「ルフィ・・・」
アラバスタで再会できて良かった。
良い仲間達に囲まれていると知れて良かった。
一人じゃ何にもできねェ、できの悪い弟だからな。
「なあ、サボ」
“おれ達の弟だ、よろしく頼む”
「あいつは楽しそうだったぞ」
見上げる空に、ひときわ輝く一等星。
金色に光るその星は、もう一人の“長男”の髪を思い起こさせる。
「まァ、おれよりもずっと・・・お前の方があいつのことを知っているんだろうけどな」
ルフィには甘かったお前のことだ、空からちゃんと見守ってるんだろ?
話し相手が誰もいない時、ふと思い出すのは二人の兄弟。
ルフィ、そして、死んだサボ。
エースは左上腕に刻んだタトゥーの「S」にそっと触れた。
わざわざ上からバツ印が施されているそれは、サボが最後にエースとルフィに残した手紙に記されていた彼の海賊旗。
「さーて、次の島に着くまで寝るか」
ティーチの足跡を追い続け、段々と互いの距離は縮まっている。
おそらく、ログポースを辿ってこの先の島の次にある、「バナロ島」で捕まえることができるだろう。
とりあえずは、しばしの睡眠を。
「くかー」
エースが夢の世界へ飛び込むまで、数秒とかからなかった。
このスピードでいけば朝日が昇る前には到着するだろう、バナロ島の一つ前の島。
そこで彼は、海賊としてではなく、一人の男として“誓い”を立てることになることも知らず、白ひげ海賊団2番隊隊長はのんきに鼻提灯を膨らませていた。