第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
幾千もの星が空一杯に散りばめられた、ある夜。
エースは“メラメラの実”の力を動力として海の上を走る、一人乗り用の船ストライカーに寝そべりながら、星空を見上げていた。
海賊の“鉄の掟”を破ったマーシャル・D・ティーチを討つため、白ひげ海賊団を離れて数カ月・・・
オヤジ。
マルコやジョズを始めとした仲間達。
スペード海賊団を組んでいた頃からの仲間達。
彼らと騒がしく過ごしていた日々が、懐かしい思い出のように感じる。
ティーチがサッチを殺して船から逃亡した時、船長エドワード・ニューゲートは“特例”としてティーチの後を追わなくてもいいと言った。
しかし、いくらオヤジの言うことだろうと、エースはどうしても許せなかった。
最初は敵として白ひげの前に現れた自分に、サッチは誰よりも先に“仲良くしよう”と親しげに接してくれた。
ティーチは絶対的な存在であるオヤジの顔にドロを塗った。
この背中に白ひげの髑髏を背負う限り、絶対に生かしておくわけにはいかない。
「しっかし・・・静かな夜の海っていうのは、なんでこうも退屈なんだ。近くに宴をやっている船はねェもんか」
エースはリンゴを齧りながら呟いた。
もともと“孤独”には慣れていたはずだ。
だが、話し相手が誰もいない時、ふと思い出す。
“だって他に!! 頼りがいねェ!!!”
ツバを吐きかけようが、危険な山道に置き去りにしようが、しつこく後を追いかけてきたガキのことを。