第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
ドォン!
ドォン!
砲弾の雨が降る中、サウザンドサニー号は岬に向かっていた。
それは、船長の指示。
「ルフィ、本当にこっち?!」
「ああ、そうだ! もっと船を寄せてくれ!!」
「無理よ! この辺りは浅瀬が多い・・・座礁するわよ!」
「そん時はお前がなんとかしろ、ナミ!」
「ムチャ言わないでよ!」
飛来する砲弾はゾロやサンジ達に任せ、ルフィは真っ直ぐと岬の方を見ていた。
せっかく海軍に見つかる前にログが溜まったというのに、寄り道をしようと船長が言い出したせいでこの有り様だ。
だが、その強い想いが届いたのか。
岬の上に人影が現れる。
「・・・あ!!」
ルフィは誰よりも先にそのことに気が付き、そちらへ向かって大きく手を振った。
「おーい!!!」
向こうもサウザンドサニー号に気が付いたようだ。
彼女は素顔を潮風に晒し、再び冒険の海に出ようとしている海賊船に手を振っている。
ルフィは、大きな笑みを浮かべた。
「クレイオ!!!」
爆音に掻き消されぬよう、腹の底から声を絞り出す。
「海賊王に、おれはなるぞ!!」
その言葉を合図に、彼がもっとも信頼を寄せる仲間達も岬の方へ顔を向けた。
ゾロ、ナミ、サンジ、ウソップ、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルック。
全員が船長と同じ方角を見る。
「だからお前!! 絶対にそれを見届けろよ、約束だぞ!!」
守れない約束はしないルフィ。
だからこそ、相手にも守れない約束を強いることはない。
貴方は確信しているのでしょう、未来の海賊王。
私がその日まで必ず生きている、と───
クレイオは、はためく海賊旗に向かって微笑んだ。
「貴方が海賊王になる日を必ず見届ける・・・約束よ」
潮風が、太陽が、こんなにも優しいと初めて知った。
そして、大海原へ漕ぎだそうとしている船の姿が、あれほど美しいとは。
大丈夫、私は孤独ではない。
「ありがとう、ルフィ」
クレイオは別れの言葉ではなく、感謝の言葉を海賊船に向けた。