第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
翌朝。
長い眠りから目覚めたクレイオは、起きてすぐに洗面所へ向かった。
昨晩見た夢があまりにもリアルで、もしかしたら醜女として生きていた人生が夢だったのではないかと思ったから。
期待して鏡を覗き込むも、そこに映る姿は全てがいつも通りだった。
老い衰えた身体、バケモノのような顔、薄くなった髪、どこからどう見ても醜い老婆だ。
17歳の美しい少女など、どこにもいなかった。
「やはり夢だったんだ・・・」
しかし、落胆しながら部屋に戻ったクレイオの目に、あるものが飛び込んでくる。
それは“夢”が“夢”でなかったことを証明していた。
「え・・・?」
“サンジがクレイオのために作ってくれた弁当も持ってきたからな。おれが食っちまった分だ”
開け放した窓の下。
そこに、大きな包みが置かれている。
「・・・あれは夢・・・だったはず・・・」
ヨボヨボと窓に近づいて包みを開けると、中には“麦わら海賊団”のドクロがデザインされた弁当箱が入っていた。
ということは・・・
昨晩、確かにルフィがここに来たということか。
“婆さん、料理うめェな! サンジみてェだ!”
麦わら帽子を被ったドクロの絵を見ていると、ふと心が締め付けられる。
それは、77年間生きていて一度もなかった感覚だ。
「あの子は・・・こんな醜い老婆の手料理も、本当に美味しそうに食べてくれた」
ルフィの仲間が羨ましくて仕方がない。
私も同じぐらいの年だったら、どんなに良かっただろう・・・
ルフィならこの醜い顔でも気にせず、“仲間”と呼んでくれただろうか・・・
私も一緒に冒険をしてみたかった。
彼が夢を叶える姿を隣で見てみたかった。