第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
真夏の夜に現れた妖精が老婆に見せた夢。
それはとても美しく、とても優しく・・・
そして、とても儚い夢だった。
「ゆっくりと寝ろよ」
その腕に抱かれながら再び星空を飛び、家に戻った時はすでに月がその姿を隠そうとしていた。
「ルフィ・・・」
妖精は老婆をゆっくりとベッドに寝かせると、白い歯を見せて笑う。
夢の終わりが近づいていた。
現れた時と同じように開け放した窓辺にしゃがみ、こちらを見つめている彼へと手を伸ばせば、一緒に連れて行ってもらえるのだろうか。
あの“月の道”の向こうへと───
しかし、クレイオは妖精に向かって手を伸ばすことはしなかった。
ゆっくりと目を閉じ、そして微笑む。
「おやすみなさい、ルフィ」
とても甘く、とても美しい夢をどうもありがとう。
意識が遠くなるにつれて、だんだんと身体が重くなっていく。
耳も遠くなっていく。
関節の痛みも戻ってきた。
“魔法”が少しずつ、少しずつ解けていく・・・
「じゃあまたな、クレイオ」
その言葉を残し、妖精は夜空へと戻っていった。