第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
「でも、海賊王ってたくさんの海賊が目指しているものでしょう? そのために死ぬかもしれないのに、ルフィは怖くはないの?」
「ああ、怖くない」
力強く微笑んでいるのに、どこか儚いのは白い月光のせいか?
「おれがなるって決めたことのために死ぬんなら、別に構わねェ」
当たり前のことのように言ったその言葉に、ルフィの“儚さ”の理由が見えたような気がした。
彼は、死ぬ覚悟ができている。
いつ死んだとしても、今のように微笑みながらそれを享受するだろう。
それだけ、悔いのない生き方をしている。
だけど、信念というものは時折、強すぎれば強すぎるほどその者の死を早めてしまうことがある。
さっき、“何度も死にかけた”と言ったのは本当のことだろう。
強い信念が、思いが、それだけの危険を呼び寄せてしまう。
その度に彼の仲間は肝を冷やしているはずだ。
「自分は死ぬかもしれないのに・・・私には死ぬなというの?」
「ああ、そうだ! おれが海賊王になるまで、お前は勝手に死んじゃだめだ」
「じゃあ、ルフィが先に死んだら?」
「そん時はオメェ、好きな時に死ね」
「・・・ずいぶんと勝手ね」
本当にワガママで頑固。
でも・・・
不思議と“味方になってあげたい”という気持ちにさせられる。
この子なら本当に海賊王になってしまうかもしれない、とすら思えた。
「じゃあ、お願いだからあと3年以内に海賊王になって・・・80を過ぎたらさすがに元気でいられる自信がないから」
「そうか? お前、そんなことなさそうだけどな」
「お世辞はよしてよ」
「おれ、お世辞なんか言ったことねェぞ」
ルフィは軽く前屈みになると、クレイオの顔を下から覗き込んできた。
真ん丸の瞳でジーっと見つめてくるルフィに、なんだか恥ずかしくなって顔を背ける。