第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
クレイオが生まれた時、その奇形に脳機能や呼吸器官に異常があると言われ、長生きはできないだろうとされていた。
だが、実際はこうして77年間も大病せずに生きている。
嵐の夜に海へ投げ捨てられても生き延びたし、潮風に晒され不毛であるはずの庭には野菜や果物が生っている。
ルフィの言うようにクレイオは守られているのかもしれない。
「お前も一人じゃねェ」
だって、こうして“生きて”いるのだから。
「だからもう顔を隠すなよ。堂々としてたって、お前のこと嫌いになる奴なんていねェぞ」
彼の瞳はどこまでも真っ直ぐだ。
曇りない眼差しで、夜の海に浮かぶ“月の道”の遥か向こうを見据えている。
きっとあの道の先にあるのは、クレイオには想像もつかない境地。
「クレイオ・・・おれは、必ず海賊王になる」
枝の上に置かれたクレイオの手に自分の手を重ね、ルフィは微笑みながら言った。
「だからお前、そん時まで死ぬな」
ここはグランドラインに浮かぶ小さな島。
彼が望む称号を手にするためには、遥か先にある新世界を制する必要がある。
そんなことが、この細身の少年に可能なのだろうか・・・?
「私は77歳よ・・・明日死んでもおかしくない」
「いいや、お前は死なねェさ」
しかし、どうしてだろう。
その細身の少年は確信に満ちていた。
「何年かかるか分からねェけど、おれが海賊王になるまで死ぬな」
「ルフィ・・・」
「おれが海賊王になるのを、お前にもちゃんと見てもらいてェ」
王下七武海、兄ポートガス・D・エース、四皇、そしてシャンクス。
全てを越えて、ワンピースを手に入れる。
そしたらお前の名前を大声で叫ぶからよ、とルフィは笑った。