第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
「ルフィ、海軍だ。窓からお行き」
「大丈夫だ、おれが全員ぶっ飛ばす」
「でも、さっきの網みたいな武器を使われたらどうするんだい」
ルフィの力を奪ってしまう、海楼石の網。
あれで捕まってしまったらクレイオにはどうしてやることもできない。
ルフィはしばらく不服そうにしていたが、どうやら納得してくれたようだ。
「───じゃあ、また必ずくる」
そう言って、ドアとは反対側の壁の窓を開ける。
ヒュウッと潮風が吹きこんできたかと思うと、首から下げていた麦わら帽子を被りなおしてニコッと笑った。
「そん時はお前の好きなところに連れていってやるからな、クレイオ!」
ルフィは海賊だ。
その言葉が真実だろうと幻だろうと、かまわない。
「ありがとね、ルフィ」
それでも、こんな自分に微笑みかけ、約束を交わしてくれる人がいることが嬉しかった。
窓から出て行った少年の後ろ姿は、一瞬にして見えなくなってしまう。
あれだけのすばしっこさなら、海兵に捕まることはないだろう。
「・・・さて」
クレイオは深呼吸を一つすると、海軍がけたたましく叩いているドアの方を向き直した。