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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)








翌朝。

赤髪海賊団はローグタウンを出航した。


結局、昨晩は宴に現れなかったシャンクスに、乗組員の一人がベックマンに耳打ちをする。
彼は昨日、シャンクスの左腕の治療を気にしていた海賊。


「お頭、様子が少しおかしかったですが、大丈夫ですかね?」


いつもなら出航時は景気よくいくものだが、今日はまるで喪に服すようにひっそりと港を離れた。
左腕の具合がよくないのでは、と乗組員が心配するのも無理はない。

誰よりもベックマンが、シャンクスの様子がいつもと違うことに気が付いていた。

でも、その理由は分かっている。


「シャンクスにとって、この町は特別なんだ」

「ああ・・・海賊王が処刑された地だからですか?」

「それもあるが・・・」


副船長は、煙草の煙をゆっくりと吐き出しながら、だんだんと小さくなっていく港を見つめた。


「この町には、時の流れから取り残された女がいる」

「時の流れから取り残された?」

「不老の力を得たばかりに、永遠に続く命と向き合わなければいけない女のことだ」

「永遠の命って・・・そんな人間がいるのですか?」

乗組員はベックマンの言葉が信じられないといった様子だった。
それも無理はない。


「その魔女のような女と・・・お頭はいったいどのような・・・」

「無粋な質問はよせ。余計なことを気にしていると、海の上じゃ死ぬだけだ」


ベックマンは艦首でじっと海原を見据えている船長に目をやった。

シャンクスの横顔は今、10代のころの面影を感じさせている。
クレイオと会った日はいつもこうだ。


望んでか、望まざるか、シャンクスも時代の申し子。

今は片腕となったその肩に重圧がのしかかっている。


「これは“嵐”を覚悟しなければならねェかな」


麦わら帽子を脱いだシャンクスは、この先の海で大きく変わるだろう。
その彼を支えるのは一苦労だ。

ベックマンは腹を括った。





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