第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
その気持ちをクレイオも悟ったのだろう。
千切れたシャンクスの左腕を撫でながら、聡明な瞳を向ける。
「貴方が麦わら帽子を託したという、フーシャ村の子どもの名前は?」
「モンキー・D・ルフィ」
「D・・・そう、彼も“D”なの・・・」
その名は心の一番奥にとどめておこう。
決して忘れることのないように。
「楽しみね・・・そのルフィくんがこれから誰と出会い、何を感じていくのか」
「きっとお前を退屈させはしねェさ」
「ふふ・・・それまでは貴方達が私を退屈させないでね」
モンキー・D・ルフィ。
彼とその仲間、そして彼と関わる人間らが織りなす物語を、紡いでいこう。
そうしてできた「ひとつなぎの物語」の終着点は、きっとロジャーが求めているものに違いない。
「どこかでルフィくんが“オペオペの実”の能力者と出会うことがあればいいな・・・」
「そいつが死ぬのを待つことができるからか?」
「ううん・・・そうじゃない」
血の繋がりはないけれど、その人物と同じ呪いが私の中に宿っている。
「私が唯一、“家族”と呼べる人だから・・・その人の物語も見届けたい」
シャンクスはそう言ったクレイオを優しく見つめると、一本の腕でその身体を抱きしめた。
永遠の命を得た代償に、クレイオは妊娠をすることができなくなった。
たとえ誰かと結ばれても、クレイオにとってはほんの一瞬の慰めにしかすぎない。
“家族”といえるのは、同じ“オペオペの実”の能力を知るものだけ、ということか。
この世界に星の数ほどある悪魔の実だ。
ルフィが“オペオペの実”の能力者と出会う確率は、限りなくゼロに近いだろう。
それでも・・・
「ルフィなら奇跡を起こすさ。あいつはおれが見てきた中で一番、ロジャー船長に似ているからな」
ルフィが海に出るのは、まだだいぶ先のことだろう。
シャンクスとクレイオは、いつか訪れるその日を思い描き、つかの間の二人きりの時間を心ゆくまで堪能していた。